新その人事に異議あり 高杉良 講談社 2005年8月





高杉良の本は何冊か読んでいます。本当に時々読みたくなります。企業小説のジャンルに入ります。現在の会社組織がどのようになっているのかを知るには好都合な本です。
今回のテーマはオーナー社長が息子にその権限を禅譲できるのかというものです。舞台はアパレルですが、下着メーカーのワコールあたりを下敷きにしています。またセシールなどの通販にもかなり取材をかけています。
息子にどうしたら自分の地位を譲れるのか。あるいは番頭格の副社長との確執など、かなり生々しい話が土台になっています。
読み終わってみると、会社とは誰のものなのかとしみじみ考えてしまいます。西武もダイエーもみなオーナー社長がひっぱり破綻していきました。
ダイエーの中内氏は息子に社長職を譲ったものの、自らは会長として院政をしき、結局はそれも失敗に終わったのです。
この小説の中にも広報部の存在がかなり色濃く書かれています。経済新聞の記者とのやりとりや、スクープ記事をせめてベタ記事にしてもらう交渉など、生々しいものです。
また社長がかつて愛人に生ませた子供の話や、それを自らの地位の保全に役立てようとする副社長の姿など、かなり現実に近い要素が組み込まれています。
せめては主人公の女性広報部主任と、最後は結婚にいたる認知されなかった子供との恋愛のすがすがしさに、救いを求めるべきでしょうか。
会社は生きているということが、この本を読むと実感されます。働くことの意味や、人事配置の複雑な要素をあらためて感じました。