いまどきの「常識」 香山リカ 岩波書店 2005年9月





何気なく手にとって読んだというのが印象です。テレビなどでよくこの著者をみかけますが、そこでの発言よりはずいぶん落ち着いているというのが、率直な感想です。
その中で一番面白かったのは、最近の若者がよく口にする「ゆっくりしたい」ということに対する解釈でした。確かにそう言われてみると、よくこの表現を耳にします。
しかしゆっくりするとはどういうことなのかと突き詰めてみると、なかなかはっきりとはしません。ゆっくりしたいと呟く人たちは、表面上リラックスしているようにみえても、精神的に追いつめられているのだといいます。
とにかく今のままでいいんだと他者に認めてもらうまで、彼らはゆっくりできないのです。
自分にあった生き方をしようなどというスローガンの前で疲れ果ててしまうのでしょう。自分探しもここまでくると、今度は苦痛にかわります。
現代はお金へのタブーもなくなり、額に汗して働かなくても、現金を自分のものにした人間が肯定されるという風土もあります。
現実に即していないと、時代に取り残されるという恐怖もあるのでしょう。その線上に、様々な心の悩みをかかえた人が発生するというわけです。
愛国心とか反戦とか平和とか、さまざまな常識が覆されつつある今日、あたりまえに生きていくことの難しさをあらためて感じました。