地図を創る旅 平田オリザ 白水社 2004年4月





平田オリザの本はどれも刺激的で、ぼくにとっては大変面白いものです。特に高校時代に自転車で世界一周旅行をした記録とか、受験勉強の話とか、バヌアツへ旅した時の話とか、どれも刺激的なものでした。
こういう人が存在しているのだということを素直に認めさせてしまえるだけの資質をもっていることが、強みだと思います。
近年は彼の主宰する劇団「青年団」の活躍がよくマスコミでもとりあげられます。しかし旗揚げした当時、今日の活躍を想像した人は誰もいなかったでしょう。
これは多分平田自身においても同じことではなかったでしょうか。しかし彼の意志的な行動の全てが今日に一直線で繋がっていることは間違いのないところです。
ICUのD館で青年団を旗揚げした当時の様子から、韓国への留学、アゴラ劇場の借金、結婚、その後の演出遍歴、旅公演など、今までに彼がしてきたことの全てが、まるで日記のように綴られています。特に劇団員同士のトラブルの大半が男女の話ばかりという段にはつい笑わされてしまいました。
ここにみられるのは、本当に自分たちは新しい演劇をつくるのだという自負でしょう。それに支えられていなければとても、今の状態にまで到達できるとは考えられません。
後ろ向きに台詞を言うとか、重なって話すとか、暗転のない照明プランなど、全て彼の考えてきた世界とも言えます。最初はそれを非難されたことも、平田は忘れていないのです。その当時の劇評を机の一番よく見えるところに置き、今でも時折読み返すといいます。怨念に近いものがあるのかもしれません。
ぼくが今までに見てきた芝居や読んできた戯曲の話がふんだんに載せられているので、読んでいても全く飽きることがありませんでした。
なぜ芝居をやっているのかと訊かれた時、彼は芝居以外に自分をこれほどまでに興奮させるものはもうないからだと答えるそうです。
他に面白いものがないと言い切れるだけの熱意を持ち続けられるということはなんと幸せなことでしょう。
幸い、アゴラ劇場の近くに勤めたというのもなにかの縁かもしれません。これから時々覗いてみることにするつもりです。