不安を生きる 島田裕巳 筑摩書房 2005年4月





著者の名前をみて、オウムとすぐに結びつく人はある年齢以上かもしれません。彼がオウム真理教をめぐって書いた記事は、その当時かなりのものにのぼっていたと思います。それも支持する立場でのものだったので、その後のパッシングはすさまじいものがありました。
結局、このことが原因で大学教授の地位を去ることになりました。それ以降、随分姿ををひそめていたという印象があります。しかしここへきて、かなりの量の本を上梓するようになりました。
今回の著作は「不安」というある意味で時代のキーワードになりつつあるものを、編集者との対談を通して明らかにするというものです。
なかでもいちばん面白かったのは、都市に住む住人が抱え込む不安というものでした。共同体が崩壊した後、何が不安を和らげる装置たりうるのか。
癒しを求める人間達は、なぜか不安を直視したがりません。しかし日常の中には容易に逃れられない不安の種がいくらでもあるのです。
未来への希望とか、会社への帰属意識とか、さまざまなものに変化が訪れています。便利な生活を手に入れた都市型の人間はどうすればいいのか。
そこにスポットをあてているのです。彼が幾つかあげていることはなんだ、そんなことかということが多いようです。しかし家族、友人、行きつけの店、インターネット、ブログなどを通じた緩やかなネットワークに活路を見いだそうとしている気持ちはよくわかりました。
さらには大学などの同窓会が思いの他、機能しているという指摘は興味深いものです。
彼が最近書いた『創価学会』という本にも触れ、この教団の変質していく姿には、今後の問題が山積しているのを実感しました。
今後、彼の著作に注目していきたいと思います。
激しいバッシングの後、随分と強くなったというのが今の印象です。