靖国問題 高橋哲哉 筑摩書房 2005年4月





 靖国神社というのはどうして、こんなに複雑な問題をはらんでいるのか。これが読み終わった今の感想です。
A級戦犯の合祀や政教分離、首相などの参拝と意見の対立は深まるばかりです。どこに解決の糸口があるのか。本当に靖国以外の施設ができれば、現在の問題は解決するのか。千鳥ヶ淵戦没者墓園や、平和の礎などとの関係にも言及しています。
この本の内容自体にも多くの賛否両論があるようです。よく書いたという評価もあれば、まったく取るに足らないという論評も出ています。
なんと複雑な国なのかというのが、今の率直な感想と言えるでしょうか。国家神道という日本特有のシステムの中で、九段にあるこの神社は呻吟しているようにも見えます。
靖国問題とは何か。それは明治時代に東京招魂社として発足したときからつきまとっていた光と影に由来するのでしょう。
国家はなぜ国民の戦死を名誉の戦死として顕彰し、その遺族を感涙にむせばせなくてはならないのでしょうか。悲しみをより高揚させ、国家の英霊にするための装置が靖国なのでしょうか。
この神社に合祀されている人たちはどういう資格の人なのでしょうか。民間人はいるのか、女性はいるのか、また外国人はいるのか。
諸外国との差はどこにあるのか。そうしたことにこの本では一つ一つ答えています。
立場が違えば、全く別の本が書けるのではないかと思うくらい、イデオロギーは強固ですが、この本は一つの方向性を示しているといえるでしょう。
最後に示された石橋湛山の靖国神社廃止論は新鮮でした。かつて首相をつとめた人が、こうした発言をしていたということもはじめて知りました。
いずれにしてももう少し勉強を続けたいと思います。