司馬さんは夢の中 福田みどり 中央公論社 2004年10月





作家司馬遼太郎が亡くなったのは平成8年2月でした。あれからもう随分歳月が過ぎています。しかし本屋さんへいくと、彼の著書のコーナーは大変元気があり、文庫本の数もものすごいです。
これだけ次々と新刊が出る中で、ある程度の棚を確保するというのは至難の技なのです。
司馬遼太郎の読者がいかに多いかということの、象徴でもあります。彼の本はどれを読んでも面白い。日本人とは何かということを、実に大きな視点から捉えようとしています。だからついのめりこんでしまうのです。
さて著者は彼の奥様です。現在は司馬遼太郎記念館の館長をしておられるとか。かつて司馬さんが産経新聞の記者をしていた時、同僚だったそうです。そのご縁で結婚したものの、その後の生活は実に不思議なものであったようです。
ここには普段の司馬遼太郎がいます。特に風邪をひくのが大嫌いで、ちょっと咳をする人が家に来た時などは、客人が帰るやいなや、家中の窓を全て開けたとか、ルゴールや赤チンでうがいまでしたそうです。
平熱の低い彼は6度5分になるともう動けなくなり、すぐに寝込んでしまったなどと、実にユニークな話ばかりが満載されています。
すぐ近くにいた人にしかわからない面白い挿話ばかりです。
しかしその彼女も夫が亡くなり、茫然自失の状態になります。それを救ってくれたのが、多くの友人でした。生前の夫が作ってくれた人脈だったのです。
家でお手伝いをしてくれていた人の話から、友人の話まで、みな面白いものです。やはり作家はまた別の顔を持っているのだなあとしみじみ考えさせてくれました。
あたたかい本です。司馬さんと自分の夫を呼んでいた時のまま、この本のタイトルも決まったそうです。