フィレンツェの高校生 山下史路 新潮社 1994年1月





 著者の本は以前にも読んだことがあります。お子さんがふとしたことで、イタリアへの留学を決意した経緯などから書き出されています。
英語圏とは違って、留学援助団体なども少なく、とても苦労したようです。結局、息子さんと2年間、フィレンツェに住んでしまったことなどを、町の様子とともに詳しく書き込んでいます。
ヴェネッチァよりもフィレンツェを好んだのはいいのですが、なんといっても物価の高さ、アパートの少なさ、人間関係の冷たさにはまいったとあります。
イタリア人は誰でも陽気で、親密になりやすいと考えている人も多いことでしょう。しかしフィレンツェは他の都市と随分違うようです。
それでも親しい友人が増えるにつれて、イタリア人の生活の一端が垣間見えてきます。郊外に別荘を持ったり、夏は2ヶ月も休むといったような悠々自適な暮らしがなぜできるのかを、年金システムについての話などを交えながら、披露してくれています。
息子さんはイタリア語の他にドイツ語と英語の授業を受け、次々と友達を増やしていきます。
成績だけで人を判断しないという、ごく普通の人間関係がここには描かれています。家族単位でパーティなどをするために、広い居間などがどうしても必要なようです。
日本人とは随分違う食習慣や味覚についても面白い記事が載っています。今は何も生み出さない古い町、フィレンツェに降り立った高校生の生の姿に触れることができるでしょう。
ぼくもフィレンツェには行ったことがあります。メディチ家の遺産はドゥオモを中心として、まばゆいばかりでした。茶褐色の家並みが忘れられません。
この本を読みながら、かつて『ミュンヘンの中学生』『ミュンヘンの高校生』という子安美知子さんの本を読んだことを思い出しました。こちらはシュタイナー学校に入った娘さんのものです。読み比べてみると面白いかもしれません。