アフターダーク 村上春樹 講談社 2004年9月





たった一日の夜から明け方までに都会では何が起こっているのでしょうか。それを寓話的に描いたのがこの作品です。
幾つかの構成部分からできています。しかし眠り続ける姉のシナリオは理解できませんでした。
最新作のわりには、あまり彼の深さを感じられないまま、読み終わってしまいました。幾つも疑問が残ります。もともと嫌いではない作家だけに、どこへ進もうとしているのか、気になります。
装置は携帯とパソコン。この二つは良くも悪くも現代を象徴しているのでしょう。登場人物は眠れない少女とトロンボーンに熱中し、たまたま裁判所の傍聴をしたことで、弁護士の試験を受ける気になった青年です。この二人を軸に話が展開されます。
しかし話がどこまで進んだのかといえば、それはまさに元にただ戻っただけなのかもしれません。
ほとんどストーリーらしきものもなく、登場する場所は記号としてのデニーズとセブンイレブン、そして、装置としてのすかいらーくです。この小説がどれほどの普遍性を持つのかといえば、多分圧倒的に短い命しか持ち得ないでしょう。小説は疲弊しているのかもしれません。
あるいは現実があまりにも疲れ果てているのかもしれません。
大きな感動もなく失望もなく、人の命が消えていく時代というものを強く感じざるを得ませんでした。
ぼくと同時代の人です。絶望が想像以上に深い気がします。