変容 伊藤整 岩波書店 1968年9月





大学時代、この作家を集中的に読んだ時期があります。小林秀雄と、伊藤整のゼミをとったからです。『発掘』『氾濫』『変容』は彼の後期を代表する三部作です。その他に『年々の花』という作品があります。
この作家のものはほぼ10年おきに読み返しています。今回、どうしてもまた変容が読みたくなり手にとったというわけです。
この小説は60歳になろうとする画家とそれまでに関わった女性達との関係を綴っていったものです。
特にこれといったストーリーがあるというわけではありませんが、年齢を重ねていった作家の目に映る人生の種々層が男と女という関係の中で描かれています。
かつてはわからなかったことが、ぼく自身にも実感として理解できる部分があちこちにありました。
現在ではほとんど読まれることのない作品だと思います。
それでもぼくにとっては、その時々の人生観を確認する小説です。人間は老いてもなお、煩悩の世界から少しも抜け出ることができないということを、実証したような作品です。読んでいて、少しつらくなりました。こういう風に人はきっと生きて死んでいくのだろうと実感しました。
また10年経ったら読んでみようと思います。その時はこの画家の年齢を超えていますが、さてどういう感想を抱くのでしょうか。
いい作品にはやはり尽きない命があります。