野中広務 差別と権力 魚住昭 講談社 2004年6月





 以前から読みたいと思っていた本です。朝日新聞の書評に取り上げられた時、これだと感じました。それは野中広務という政治家が部落民という偏見と差別の最も強い階級からのし上がってきた人だという事実を元にして書かれていたからです。
京都府船井郡園部町の町長からさらに府議、副知事、そこから衆議院へと登り詰めていく階段を読者も一緒になって体験することになります。
政治の世界は権謀術数の渦巻く伏魔殿といってもいいでしょう。田中角栄に知遇を得て、そこから多くの政治家と親密な関係を築いていきます。野中弘務という男は自分で政局をつくる男ではありません。つねに潮目を読み、関係を調整する役割をにないます。
しかし新生党旗揚げ、小沢一郎などの動きにより、自民党が崩れ、さらには社会党を抱き込んでの復活、また公明党を入れ、自自公での政権奪取など、その後の動きはめまぐるしいものでした。
この本の中ではたくさんの政治家が暗躍します。金も動きます。あらゆる談合や、選挙の裏側がこれでもかというくらい描かれています。
最後に小泉政権が生まれ、ついに野中の政治生命は断たれます。その前に国旗、国家法案がなぜ彼によってなされたのかという理由などが差別の問題と絡んで解説されています。
日本という国のあり方を描く方法はいくつもあるでしょう。しかしここまで生々しく政治の裏側に入ってしまうと、民主主義とは何なのだろうという感慨をつい抱いてしまいます。
つねに政治は為政者のものでしかないのかもしれません。
とにかく面白い本です。権力だけが持つ魅力と怖さを十分に表現しています。政治の世界にはたくさんの悪魔が住んでいることを実感させられる本でした。