生きること演じること 神山典士 ぴあ 2002年10月





 副題に演劇人たちの人生、その光と影とあります。この本は小劇場系の俳優、演出家として知られる、古田新太、横内謙介、渡辺えり子などをはじめとして、いわゆる正統派新劇人 橋爪功、緒形拳、大竹しのぶ、市村正親までを網羅した、本当に切れ味のいい評論です。
とくに著者の目にうつったそのままを切り取り、文章にしたものだけに深みと味わいがあります。
2001年から2002年にかけて、演劇界では20周年を祝う劇団が多かったのです。
そのなかにはここでも取り上げられた「劇団第三舞台」や「劇団新感線」、「遊機械全自動シアター」「自転車キンクリート」などが含まれます。
今、これらの劇団の中から育った俳優や演出家が一番活躍している時ではないでしょうか。
ぼく自身の観劇体験も彼らを中心としたものでした。第三舞台や、遊機械などの舞台は、今でも忘れられません。
高泉淳子が山田のぼるくんを演じた「僕の時間の深呼吸」や第三舞台の「朝日のような夕陽をつれて」はいつも脳裡にあるぼくのもう一つの風景です。
また市村正親の演技は常に迫真のものであり、他の追随を許しません。個人的には「ミスサイゴン」の舞台が好きです。彼がどのようにして、四季の団員となり、そこをさらに抜け出て飛躍したのかも、大変面白い逸話に満ちています。
さらに寺山修司の戯曲を蜷川幸雄が脚色した「身毒丸」。この作品にオーディションで選ばれた藤原竜也のインタビューも興味あるものでした。
随分前に天井桟敷の舞台で、ぼくはこの「身毒丸」を見ています。あれは確か紀伊国屋ホールでした。中央に舞台をせり出して、白塗りの身毒丸が登場します。
本当に独特の空間でした。あの時はまだ寺山修司が生きていました。ホールの階段にじっと立っていた姿を覚えています。
残念ながら、今回の蜷川演出の舞台を見ていないので、記事に最後まで没入できなかったのが、心残りです。
いずれにしても著者の目はとても確かで、芝居を心から愛していることがとてもよくわかります。
こうした本が多くの人に読まれることを祈ってやみません。演劇の素晴らしさがあちこちから感じられるいい本です。