「リアル」だけが生き延びる 平田オリザ ウェイツ 2003年12月





著者はワークショップで新しい演劇の手法を試み、着実に伸びてきた劇団「青年団」を主宰しています。
最近ではフランスなどでの公演も高い評価を得ています。
一言でいえば、「静かな演劇」といえるでしょう。世界をどうみているかを表現するのが、演劇であるとすれば、彼の芝居は、まさに平田の世界観そのものです。
劇中で何も起こりません。ただの日常が演技であるという感覚なしに淡々と進んでいきます。
ある時、稽古場に来た人は、まさか稽古の最中とは思わず、出演者に声をかけたというくらい、ごく日常的なのです。それではどこにカタルシスがあるのか。
まさにないところにあるといえるのかもしれません。
ばらばらな価値観をもった個人を結びつけるための演劇を彼はいつも考えています。それを授業の中で実践する試みも教科書に掲載しています。
高校生の頃、日本を飛び出して世界を自転車で駆けめぐった彼も、ある程度の年齢になりました。
これから何をしていくのか、正念場であると思います。毎年、高校演劇の審査員をしていて感じるのは、携帯電話のない芝居が一つもないということだそうです。
ロミオとジュリエットの悲劇も携帯があれば、防げたというテーマは面白いものでした。各地のコミュニティ館を誰がどのように運営していけばいいのかという突っ込んだ内容の提言もあります。
ぼくにとって平田オリザは不思議な存在です。いつもはあまり気にもなりませんが、どこか深いところで、揺り動かす力を持った人です。
リアルとは何かというのは大変難しいテーマです。同時に台詞を呟くという手法は彼独自のものです。アドリブはありません。青年団の給料制も定員制もやはりユニークなものです。
これからも彼の著作には注目し続けていきます。また同時に時々は静かな演劇も見続けていこうと思います。