きっと「イエス」と言ってもらえる シェリー・ブレイディ 草思社 2004年3月





心温まる本です。原題は「私がビル・ポーターから学んだ10のこと」です。ここに登場する主人公、ビル・ポーターは脳性まひのため、手足が不自由で言葉がうまく話せません。ネクタイも自分一人では結べないのです。
出産の時、鉗子を使ったのがいけなかったのか、あるいは産道で酸素不足に陥ったのか原因ははっきりしません。
しかし彼の母親はけっしてビルを養護院に預けたりはしませんでした。普通の子として育て、仕事に就かせようとしたのです。彼は惜しみない母の愛情に支えられて成長します。
そして高校を出てから、職業を探して歩くのです。しかし彼が思うように社会は動いてくれません。就職斡旋所の人は次々と紹介をしてくれるものの、やはり手足が思うように動かないことや、言葉がままならない事実はどうしようもありませんでした。
最後に残ったのがセールスの仕事です。彼は毎日カタログを持ち、8時間町の中を歩きます。この生活を実に50年間も続けました。
どんなに断られても、この次は会ってくれるかもしれないと思い、また訪ねるのです。ビルは逆境を嘆きません。とにかく歩くのです。
最初に門前払いをした人たちは、一番の得意客になりました。ビルは品物がなくなる頃を見計らってドアを叩きます。お客さんに商品を売る時も嘘偽りを言うことはありません。たった2セントでももらいすぎたら返します。
そうこうしているうちに、ワトキンズ社のセールスマンとして優秀賞を得るのです。それがテレビに取り上げられ、全米に彼の名が知れ渡ることとなりました。
どれほど背中が痛くても、自動車事故に巻き込まれても、彼はそれをマイナスとは考えません。いつも前向きの姿勢がたくさんの視聴者を癒したことは間違いがないのです。
この本を読んでいる間、どうしてこんなにいつも人生を肯定的にとらえられるのだろうと思いました。
人に騙されても朗らかで実直な彼は自分というものをまっすぐ貫き通してきました。
逆境を嘆かない、資質を見極める、使命を全うする、学び続ける、感謝の気持ちを忘れない、自分で選ぶ、誠実であるなどなど、ここに表現されたことはどれも簡単なことではありません。
それだけに実践してきたビルの生き様には感動させられました。
著者は高校生の時、はじめて彼の下で配達の仕事を手伝い、その後アシスタントとして、身の回りの世話や講演活動などを手助けしている女性です。身近なところで日々の暮らしをみているだけに、説得力のあるいい文章でした。