なぜイタリア人は幸せなのか 山下史路 毎日新聞 2003年6月





この本の著者はフィレンツェにとうとう家を買ってしまいます。冒頭、その場面から始まることで、イタリアという国の不動産に対する文化の違いにまず脅かされます。
石でできた家は最低でも100年、管理さえよければ数百年は持ちます。だから彼らは一生の間、家を建てる必要がありません。
高いローンを抱えることもないわけです。内装費だけで十分なのです。おいしい食事をしながら、とにかくお喋りをする。そこに喜びを見いだすのがイタリア人の生き方です。
息子さんのイタリア留学は、とうとうお母さんまで巻き込むことになってしまいました。
比較文化論として読むと、なかなか面白いことがたくさん書かれています。しかし基本は暮らし方の違いにつきるのではないでしょうか。
小学校から落第があり、大学入試のために塾に行くなどということは考えられないお国柄です。高校卒業の資格があれば、医学部を除いて、どこの大学へも入れます。偏差値もありません。
そのかわり、卒業率は半分以下です。厳しい学業が待っています。中学、高校と哲学を大切にし、暖かいおもいやりの心を持たなければ、どんなに学業が優秀でも人として認められることはありません。
また年収が低くても何も怖がらないのは、老後の安心があるからです。9割以上の人が別荘を持ち、夏は長いバカンスを楽しみます。
それもこれも医療の無料化と最後の10年間の平均で年金額を決めるというシステムのおかげです。
無駄なことにはお金を使わず、それでいてファッションにはいつも気を使います。スローフード運動を提唱したリーダー、カルロ・ペトゥリーニ会長へのインタビューの内容も含まれています。
この本を読みながら、人生に対する考え方が根本的に日本人とは違うと感じました。長い他国との戦いの中で得た教訓が、随所に生かされています。
政治に対する関心の高さにも驚かされます。選挙の投票率は9割近いといいます。つねに自分たちのために政治があると考えている彼らを、いわゆるステレオタイプなイタリア人像でかたづけることはできないでしょう。
日本人とは根本的に何かが違うと強く感じました。示唆に富んだ面白い本です。