喜劇人に花束を 小林信彦 新潮社 1996年4月





本棚の奥から引っ張り出して再読しました。このところ、喜劇に対する興味が尽きません。元々、ぼくの資質の中にそうしたものを好む傾向が強いものと思われます。
登場するのは植木等、藤山寛美、伊東四朗です。なかでも一番興味があったのは、ぼく自身の血とは異なる場所にいた藤山寛美でした。それは著者の小林も同じだったようです。
しかし彼はある時期、意識して寛美の舞台を見ています。寛美はいわゆる「浪速にわか」の系列に入る役者です。
渋谷天外に放逐され、再び松竹新喜劇に呼び戻されるまで、冷や飯を食わされました。その恐怖が、後の小島秀哉に対する厳しい態度にもつながっています。
自分を超えようとする人間に対して、本能的な恐怖心を抱いていたのです。しかし最も藤山が怖れたのは、森繁久弥であったといいます。軽々と時代の中を生き、「屋根の上のバイオリン弾き」に登場するテビィエのような主人公の造型までつくりあげてしまう、その才能に芸人として直感的な恐怖を抱いたのです。
どうしてもかなわない存在が森繁でした。かつて面識を得ようとした時、一喝されたことも心の中に残っていたのです。
寛美はリクエスト公演を新橋演舞場で3ヶ月も行い、これが頂点となりました。
しかしその後、新しい演目は生まれず、時代の中で次第に風化していきます。筆者は何度か会い、話をした藤山寛美という役者を実に鋭く見ています。
そのことに深く感心しました。
伊東四朗については他のところで書いたことがあるので、ここでは割愛します。植木等に関しての記述は、先日読んだ『テレビの黄金時代』に重なるところも多々ありました。
おそらくこれを底本にして、まとめたものと思われます。